百日咳について
- rtanaka-tky
- 5月11日
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百日咳菌による感染症です。他人から感染後、1週間程度の潜伏期を経て、軽い風邪症状(鼻水、喉痛、咳)で発症します。その後咳がひどくなり、無治療なら2-3カ月続きます。この間、熱や倦怠感はなく、咳と軽度の痰のみのことが多いです。
大人の感染では、軽いケースもあり、咳の長引く風邪として済まされることも多いです。感染およびワクチンで免疫ができますが、終生免疫とはならず、免疫は10年前後でなくなると言われています。
元々は乳幼児に発症し、日本で年間1万人も亡くなっていた感染症(ほとんど0歳児)でしたが、1968年に乳幼児へのワクチンが定期接種になってから死亡者は激減しています。ワクチンのない時代には、大人にも散発的に感染していても大事に至らず、「百日咳=赤ちゃんの感染症」と認識されていましたが、2006年~2008年に各地で成人の集団感染があり、マスコミをにぎわしました。ワクチンの普及に伴い、乳幼児の感染は激減した一方、学童児、成人に免疫の低下した人が増え、現在では学童~成人にかかる‘長引く咳’を来す感染症との認識に変わっております。
大人の百日咳は欧米でも問題になっており、アメリカでは10代でワクチンの追加接種が開始されています。日本でも最近は、妊婦への接種が推奨されています。
今回ワクチンの普及および、新型コロナに対する三密対策などにより、ここ数年感染症の蔓延がなく、免疫の無い人が増えた状況下で、過去にない程度の成人の大流行が、2025年4月から始まっており、5月現在収束しておりません。
百日咳菌は、2-3週間後には排出されますが、毒素が残り、それが原因で咳が2-3カ月続くようです。気道(特に喉)の繊毛運動を阻害して咳につながるという説もあるようですが、咳の機序ははっきりとは分かっておりません。
発症2週以内に、抗生剤を使うと、全経過が短縮されます。また抗生剤投与後1週間程度で感染性はなくなるようですので、咳があっても他人への感染のリスクは下がります。2週過ぎると菌はいませんので抗生剤治療の効果は期待できません。
要点
● 成人では、命にかかわる病気ではありません。放置しても3カ月で治ります。
● 発症後2週間または抗生剤内服後1週間は、他人へ感染する可能性が高いので、他人(特に0歳児や免疫の低い人)への接触は控えるように工夫してください。
● いわゆる咳止めは効かないことが多く、強い咳止め(コデイン類)を使うこともあります。一般に痰を出すための咳は必要ですので、なるべく咳止めは使わないことをお奨めします。
● 2週後より4週後、さらに8週後と確実に咳の程度は改善します。もし改善しない、または増悪した場合は、百日咳以外の原因が考えられますので、ご相談ください(胸部レントゲンを撮るのが通例です。)
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